iEARNマラケシ世界大会

’iEARNのサイトに以下のニュースが紹介されました:

祝2017年度iEARNマラケシ世界大会:国際会議および青少年サミット

 iEARNの世界大会(国際会議よび青少年サミット)がモロッコのマラケシュにおいて7月17日から22日までの日程で開かれました。大会は世界43カ国から約210人の教育者による国際会議と90人の若者による青少年サミットからなり、 iEARNのプロジェクトの成果をわかちあい、そして次年度の新たな活動にむけて交流を深めました。ツイッターやFacebook、Instagramで#iEARN2017を入力すると、大会でのハイライトの写真を見ることができます。

 はじめに、開会式ではiEARNへの献身的な尽力にたいして、高木陽子さんほか、Hela Nafti, Margaret Riel, and Virginia Kingさんに特別賞が贈呈されました。 

 会議ではStaying Healthy(健康になる), Girl Rising(ガールライジング、私が決める私の未来)やMachinto: Hiroshima for Peace(まちんと:ヒロシマから平和を)、Hip Hop on the Spot(ヒップ・ホップ)など65余りのワークショップやセッション、発表がなされ、並行して行われた若者サミットでは14回にわたるセッションがなされました。

 プロジェクトで、ビデオをどのように活用するか、ビデオ会議やビデオ・ドキュメンタリー、フォトジャーナリズムへのとりくみに関する参加型のインタラクティブなワークショップもありました。

 また、Stevens Initiative による「テクノロジーによる国際交流への評価」や、Adrianna Vilela と Ed Gragertによる仮想(バーチャル)ボランティア、Centre for Global EducationからのGlobal Youth Ambassador の Mohammed SidibeyとTerry Godwaldtによる基調講演がありました。

 カルチャー・ナイトでは各地域からの出し物があり、マラケシ郊外へのフィールド・トリップもありました。別の日には、モロッコからの参加者によるカルチャー・ナイト、最終日には閉会式、そしてガラ・ディナーが催されました。

 iEARNとして、末筆ながら、このような素晴らしい会議の実務にあたった現地 MEARN(モロッコ支部)にたいして、感謝の意を表したいと思います。

原文:

https://iearn.org/news/celebrating-the-2017-international-conference-and-youth-summit-in-marrakech

 

テーマは"Innovative Technologies for Quality of Global Education"「革新技術による質のあるグローバル教育」でした。午前の基調講演につづいて、午後に3つの帯でiEARNプロジェクトおよび専門的な力量をたかめる、成功事例の共有として5つづつのワークショップが展開された。

 

7月17日(月)

開会式

パネル・ディスカッション

・"Scaling up International Exchange through Technology"「技術革新による国際交流活動をどう評価するか」

 Katja Zvan-Elliot(Al Akhawayn University)

 Erica Thibault(Rabat米国大使館広報官)

 Frah Kamal(iEARN Pakistan)

全体会

・"Yes, It's Possible"「イエス、わたしたちはできる」

 Michael Smolems(dotSub, 米国)

・"The power of quality eduation in changing lives and the danger of a mind kept in captivity"「生活刷新への質のある教育のちから、と閉ざされたままにされる心の危険性」

 Mohamed Sidibay(グローバルユース)

 

7月18日(火)

基調講演

・"The power of technologies to expand access to quality and personalizd eduation worldwide"「世界のすみずみに質のあるを・一人ひとりにいきとどいた教育をひろげるためのテクノロジーのちから」

 Ed Gragert(iEARN USA), Adriana Vilela(iEARN アルゼンチン)

・"Education 2030"「2030年への教育」

 Thomas Lechner( 21st Centurey Academic Forum )

・"Qurality Education: Opportunities and Challenges"「質のある教育、多様な機会と課題」

 Dennis Sinyolo(EI, Eduction International)

 

7月18日より参加した講演やワークショップについて報告します(2日目午後からなので、開会式やカルチャーナイトには参加していませんが)。

 

7月18日午後3時から4時:ワークショップII[IC23]

  "Cizen Photojournalism"

「市民フォトジャーナリズム」

  Farah Kamal (Pakistan)

   自身はニューヨークでフォトジャーナリズムを学び、カラチの大学で教える一方で、Cizen PhotojournalismというNGO活動やiEARNパキスタンにもかかわっている。単なる写真とフォトジャーナリズムはどう異なるか、イッシューを報じることが、フォトジャーナリズムの使命だと強調された。Snap Station という雑誌(記事として)に掲載された写真と英文も紹介された。また、ある被写体でも視点が変わるとアングルを変えた実例が示された。

 

7月18日午後4時から5時30分:ワークショップIII[IC26]

 "Social and Emotional Skills + Creative Expression = Winning Learning"

「社会情緒スキル、学習を高める創造的表現活動」

  Diana Feldman (USA) / Andrea Aranguren (Argentina)

 ニューヨークのENACT( http://enact.org )という団体が展開するドラマセラピーとクリエイティブシアターのワークショップであった。CASEL(Collborative Academic Socio Emotional Learning: http://www.casel.org )という団体は、このようなすすめ方が学力向上にもつながるということで、全米で展開するようになったが、ENACTもその一つといえる。「生徒が教師のいうことを聞かない」状況が演じられた後、参加者が教室や学校をめぐる問題をグループでだしあい、スキットをつくった。単にスキットをつくるということのみならず、そのなかでさまざま議論がなされて、興味深いものであった。

 

7月18日午後5時30分から6時15分:ワークショップIV[IC32]

 "How to difine an iEARN project as a project of quality?"

「iEARNのプロジェクトにおいてどにような質を求めるか」

  Toni Casserras (Spain) / Albert Correa (Spain)

 iEARNでは、さまざまなプロジェクトがなされている。20年以上もの活動経験のあるトニーさんから、プロジェクトを一定の水準でとらえる必要があるとの提起があった。iEARNの理念にかなっているか、また継続的なとりくみであるか、地球的な課題と地域でのことをつなげることなどがあげられた。iEARNのプロジェクトが発展するために重要なことの一つと思われた。

 

7月19日 フィールドトリップ

 

7月20日 基調講演

"Technology and Humanity:Global Friendships can Change Futures"

「技術と人間性:未来を変えるグローバルな友好関係」

  Cynthia Eglish( Globaal Scribes )

 http://www.globalscribes.org

My Hero Project

「マイ・ヒーロープロジェクト」

 Cheikh Darou Seck(セネガル)

 

7月20日午前10時45分から11時15分:ワークショップI[IC32]

"Inner Joy of 'Talking Kite'"

「トーキング ・カイトに願いをのせる」

 Canthy Healy, Bridgit Stout (USA) / Ruty Hotzen (Israel)

 iEARNのプロジェクトでもトーキング ・カイトはよく知られているものの一つである。冒頭、ポーランドの教育思想家であるヤヌス・コルチャック(コルチャック先生として日本では知られている)の逸話によって、凧への希望を託す意義が示された。コルチャック先生はナチスによる圧制下において、ユダヤ人孤児を救済し、孤児院の子どもたちとともにホローコースの犠牲となった。世界中で子どもたちが願いを書いた凧を3月20日にあげるということのみならず、困難な状況にあるハイチの人びとのために支援をすることにもととりくんでいる。

 

7月20日午前10時45分から11時15分:ワークショップII[IC43]

 "International Book Club and Online Resources"

「国際ブッククラブおよびオンライン・リソース」

  W. Marshall , Fay Asfour Stump (USA) / Khalid Fethi (Morocco)

 北米ではよく知られているラーニング・サークルを読書活動に応用しながら、子どもたちの意欲をひきだそうとするものであった。グループワークでは、サークルの役割にしたがって、質問を児童・生徒がつくったり、印象に残った文章を紹介したり、皆に伝えるようなポスターをつくるようにすすめられる。

 ワークショップでは、まず、自分の生き方に影響を与えた本をカードに書き、ペアになって紹介しあうアイスブレーキングがあり、それらをSDGs(国連持続発展目標)の項目にあてはめるように求められた。短時間でいくつものオンライン・リソースが紹介され、また典型的な書籍も学齢別にあげられた。

 

7月20日午後3時15分から4時15分:ワークショップIII[IC46]

 "My street people"「地域の道と人びと」

  Toni Casserras, Albert Correa (Spain)

  地域の地名には歴史がある。それを取材し、ウエッブのうえに跡づけるツールが紹介された。ウエッブにある地図に写真や動画が投稿ができるようになっており、たがいに地域の歴史や思いを交流するプロジェクトになっている。

 

7月20日午後3時15分から4時45分:ワークショップIV[IC51]

 "Embodying Possiblities for Social Jutice - Why Telling Our Story Matters"

「社会正義への可能性を具現化する - 自分自身の問題を伝える意味」

  Fajeeyah Finnie Myers, Lisa Green (USA)

  ニューヨークを拠点に活動をするDream Yard( http://www.dreamyard.com という団体がすすめている技法を体験した。Dream Yardは演劇やダンス、創作活動などの芸術手法(アート)により、子どもや青少年の学びの場を提供している。また教師や指導者へのセミナーも手がけている。

People's Institute for Survival and Beyondによる Undoing Rasism( http://www.pisab.org )が母体とのこと。Bree Picower による教育実践研究がもとだとされる。

http://www.montclair.edu/profilepages/view_profile.php?username=picowerb

http://www.usingtheirwords.org

 ワークショップでは I believe..., I will no longer..., I am ready to... という問いかけに、思いつくことを書きだし、皆で共有した。そのなかから1つを選び、ポーズをとり身体で表現するよう求められた。次に動きをつけて、いわばダンスをするリハーサルをした。さらに3人組になって、一人の動きを他の2人がマネをするように、順にしていった。被抑圧者のための演劇(Theater for Oppressed:)でも用いられる技法と類似している印象を受けた。身体表現をとおして、皆が解放され、ポジティブな場となった。ほかに詩を創作したりすることもしており、日本の学校とも交流しているとのことであった。ヨガをも取り入れているとのことで、身体のおける平和を、自分のものにすることで社会平和が実現するということであろうか。

 

7月21日 基調講演

"Decarbonize Project: A Global Mobilization of Youth around Climate Change"

「脱炭素プロジェクト:気候変動をめぐる地球規模の青年活動」

  Terry Godwaldt(グローバル教育センター, カナダ)

 

7月21日午前10時30分から4時45分:ワークショップI[IC51]

 "Learning Together on the Global stage : How to Make Professional Learning"

  Networks ( PLNs ) Work

「地球を舞台にともに学ぶ:専門性をたかめるたためのネットワーク」

  Karen Kiirsch Page (USA)

 20年余りの教職経験の後に、教育工学で修士を取得し、コロンビア大学教育工学研究センター( http://ctsc.tc.columbia.edu/ )に所属し博士課程において研究をおこなっている。同時に、サハラ以南地域のアフリカへの教育支援のための活動もしているとのこと。

「インターネットアクセスは人権だ」という問いかけに、出席者一同に同意した。アクセスとともに教師の役割が、知識社会をひらくために重要だという。人びとはさまざまな情報にさらされ、脳の記憶容量をオーバーするかのようだ。プログラミングとかコーディングとかも教育に持ち込まれているが、支援が必要だ。

 DirectPollというツールは、簡単に質問項目をつくることができる。DirectPollを用いてSNSの利用が問われた。ツィッターやフェイスブック、インスタグラムを授業で使っている教師が多いのは驚愕だ。SELF-DIRECTED LEARNINGは伝統的にはストレスを強いるものだったが、現在では、多くのMOOCがあるが、脱落することはめずらしくない。それにたいして、リフレクションを可能とするPadletというツールによって、学びの場を創出することができる。またフェスブックのグループ(わずらわしいという誤解があるが)は、Evernote も可能性のあるツールの一つである。グーグルも便利なアプリを提供している。YOUTUBE Channel, Twitter, SCHOOLOGY, Class-Central, Outschool, Flipgridの教育利用も提唱された。

 

 "A web based EFL course for LD students"

「ウエッブで学ぶ学習障がい者のためのEFL(外国語としての英語)」

  Nourit Giselle, Ben David Erez (Israel)

 学習障がい(LD)という言葉ではなく、個性としてとらえたい。識字障がい(ディスレクシア)やADHDは神経障害で治癒不能と定義されることもある。一斉授業ではなく、個人のペースで学ぶことはできる。モロッコでは退学者が多い、教師の質も指摘された。ウエッブから音声ファイルをダウンロードをして、児童・生徒が答えを録音し教師に送るようにしている。またゲームを通して学ぶようにもしている。LDの児童・生徒のためにやさした教材もあるが、教材のレベルは変えるべきでないという意見であった。英語でHやWなど綴りと発音が異なる際にも工夫をしている。ニーズにあったやり方があれば、相応の学びの達成が望まれる。